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「まぁ、頑張って読んで見てよ。『本人と売主との間の売買契約は成立するか』と『本人は決済機関に対して支払義務があるか』について見てみるわね。で、まずは『本人と売主との間の売買契約は成立するか』なんだけど・・・」 |
なりすましの場合において、本人と売主との間の売買契約は成立するか
■1回限りの取引の場合
→原則としてなりしましによる意思表示の効果は本人に帰属しないので、売買契約は成立しない。
例外「外観の存在」「相手方の善意無過失」「本人の帰責事由」という民法上の要件を満たせば、表見代理の規定(民法109条、110条、112条)を類推適用して本人に効果が帰属して売買契約が成立する場合はある。
■継続的取引の場合
→特定のIDやパスワードを使った場合、原則として本人に効果が帰属して売買契約が成立する。
例外 システムのセキュリティが合理的に期待されるレベルにない場合
例外 消費者側の帰責事由の有無を問わず一律に本人に責任を負わす場合
(事前合意が無効となる可能性がある例)
○IDとパスワードにより事業者が本人確認をしさえすれば、消費者(本人)の帰責性の有無に関わらず、一律に本人に効果が帰属するとする条項
○具体的なセキュリティシステムについての合意のないまま本人確認の方式のみについて事前合意がなされたものの、売主側の設定したセキュリティシステムの安全性が低く、本人確認のための情報について漏洩のおそれが高い場合
(事前合意が有効となる可能性がある例)
●データはSSLで暗号化して送信するとともに、売主側のシステムの安全性が高くデータの漏洩のおそれが著しく低い場合
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「ううーむ。予には難しいのじゃあー。」 |
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「まぁ、行政は最終的な法律判断はできない訳だから、抽象的な表現になっちゃうのは仕方ないかもね。まー、ちゃんとIDとかパスワードの管理をしておけば、ほぼ大丈夫ってことかな。」 |
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「ううーむ。他人に教えちゃダメってことかの?」 |
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「それは当たり前でしょ。カードの暗証番号とかも教えちゃダメね。」 |
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「うむ。肝に命じておくのじゃ。『ちゃんと覚えるのじゃ。予の肝や。』」 |
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「・・・・・・・・・ま、いいけど。次は『本人は決済機関に対して支払義務があるか』についてなんだけど、こんな感じかな。」 |
なりすましの場合において、本人は決済機関に対して支払義務があるか
(1)クレジットカード決済
■なりすまされた本人に責任がある場合(支払または賠償義務あり)
●家族や同居人がクレジットカードを使用した場合
●他人にクレジットカードを貸与し、そのカードが使用された場合
●他人にクレジットカード番号や有効期限などのカード情報を教え、そのカード番号などが使用された場合
●クレジットカード以外に決済用に付与され、本人しか知り得ないI D ・パスワードなどが使用された場合
■なりすまされた本人に責任がない場合(支払義務はない)
○クレジットカード番号及び有効期限が使用された場合であっても、クレジットカード及びクレジットカード番号などを適切に管理・保管していたとき
○加盟店からカード決済に必要な情報が漏洩し、使用された場合
(2)インターネットバンキング
なりすましによる資金移動が有効となる場合
→本人確認の方法として複数のパスワードを使うとともに、データはSSL で暗号化して送信する場合
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「うーむ。何となく当たり前のことが書いてあるような気がするのじゃが・・・」 |
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「んー、そうかもね。ま、支払義務がある場合でもカードについている保険で補填されたりするケースもあるようだから、一概に支払請求を受けるとは限らないみたいだけど。」 |
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「ふーんなのじゃ。・・・でも、何じゃったかな。その、たしかカードが不正に使用された場合は銀行が補填してくれる制度とかができたんじゃなかったかのう?」 |
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「そうかもね。」 |
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「そうかもね。ってエライ適当じゃのう。」 |
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「んー。ちょっと棚上げしてていいかな。まとまったら、改めてアップするから。ね、いいでしょ?心とお腹が広い皇帝さま。」 |
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「おっほっほ。予は心とおなかが広いからのう。ぽんぽこぽんなのじゃ。・・・って予はタヌキじゃないのじゃ。こぐまねこなのじゃ。ぷんぷん。」 |
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「でも、今、いい音が出たわよねー。(・□・ )」 |
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「う。さっきの反撃かなのじゃ。やられたーなのじゃ。」 |
○参考条文
■民法(代理権授与の表示による表見代理)
第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
■民法(権限外の行為の表見代理)
第110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
■民法(代理権消滅後の表見代理)
第112条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
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